mellow

ケーキにフォークを刺す。向かい合った彼女は最初に苺を食べていた。おいしいね、クリームをなめながら鈴のような声で笑う。喫茶店の隅のテーブル席、あまり有名ではないピアノ曲を聴き流しながら、昔の話をしていた。私たちがまだ不幸だった頃の話。綺麗な…

でもだって別に本当に好きだけれど大好きだけれど見つめてほしいとか手を握ってほしいとかそういうのは傲慢だと思うよね、でも好きだから一緒にいたい隣にいたいずっとずっと見つめていたいよ綺麗な横顔も甘いものを頬張る顔も幸せで綻ぶ顔も笑顔も 不機嫌な…

恋文

沢山の我儘を言ってしまいましたね、御免なさい。 あの頃は、私だけがあなたを救えると、正しい方向へ導いてゆけると、そう思っていました。あなただけが世界の全てだったのです。なに一つ信じられないと固く閉ざしてきた瞳がようやく光を捉えたと思えば、ど…

微熱

身体が火照っていた。 「ねえ、泣くのを我慢すると内側が熱くなるの。分かる?その感じ。私ね、今それになってるの。どうしてでしょうか?」 これに対する回答 一つ目、寂しい思いをさせていた?ごめんね。と抱きしめる。 二つ目、分からないよ。と正直に答え…

棘があるので気を付けて下さいね、と差し出されたのに指を切った。 小さくて白い薔薇 昨日までは血が出ていたのに今日はもう出ていない。 きっと数日後には痛みも消えて、花弁が落ちる頃には 付いた傷の事すらも忘れていると思うけれど 今は少しだけ悲しい、…

「気分転換にショッピングでもしておいでよ。」 私が欲しいもの。安っぽくないベルベットのリボン、手帳、白いハンガー63個 「書籍代、交通費、食費、衣装代、必要経費。」 猫脚の椅子、電子辞書、発色の良いマニキュア、32mmのヘアアイロン、新作のケーキ、教養…

誰のものにもならない、私だけの大切なものが欲しいな と考えながら商店街から一本逸れた道を歩いてた。私が好きな人も洋服も本も漫画も食べ物も音楽も映画も花も美術も全部全部、私だけのものじゃないんだ。 ねえ、私が好きなブランドのお洋服を私より可愛…